創業1897 明治30年
名張市新町161
電話 0595-63-0173
代表者 中島 善三郎
■ 取扱商品・サービス
麹、味噌、甘酒の製造販売。酒類の販売。
店舗の外観
■ 事業の沿革
創業は祖父の代で、麹、醤油の製造販売とお米、酒類の販売を行っていました。その後、父の代のときに酢の製造販売にも取り組みました。戦争のため原材料不足に陥り、モノづくりを中断した時期もありましたが、戦後に物資の供給が戻るにつれて再開できました。今後のことを考え、昭和60年頃に醤油作りを止め、麹製造のための施設を一新しました。
現在は麹、味噌、甘酒の製造販売と、酒類の販売をしています。
麹、味噌、甘酒とともに、酒類を販売している
■ 経営理念・特色
販路拡大はせず、納得のいくものが作れるだけの量を取り扱うこと。麹作りも機械化が進んでいるが、全て手作業で作っていた経験を活かし、どこまでもモノづくりにこだわりたい。
大正、昭和に使われた麹蓋が残っている
■ 「麹は生き物、麹の気持ちになることです」
Q 三代目の善三郎さん(85)は、いつごろからこの仕事に就いたのですか?
A 麹作りの経験年数はもう70年くらいになります。父が若くして亡くなったので、小学6年の時、創業者である祖父から麹のことを習い始め、中学時代には朝早く起きて家業を手伝っていました。
むろの中に蒸気を通し、温度管理をしている
Q ここにある密閉された部屋で、麹を発酵させるのですか?
A これは麹菌の発酵部屋で「室(むろ)」と言います。まず蒸し上げた米を作業台に置き、一定の温度まで冷ましてから麹菌を振って職人の手で混ぜます。これを布に包んでむろの床に運び、37から40度にコントロールされた麹室で2昼夜寝かせ、ゆっくり発酵させるのです。
昔はむろの中に何百枚の麹蓋に入れて1枚ずつ表面を均すなどの重労働でしたが、今では1枚の大きな麹槽を使うので作業が楽になりました。発酵の完了した麹は冷却し、むろから出して袋詰めして冷凍保存します。
職人により蒸し上げた米に種付けして混合する作業
むろの中の半切り(はんぎり)に種付けした蒸し米を入れる作業=中央が中島社長
Q 仕事を進める上で大切にしていることは?
A 手作業が多かったので、昔からの言い伝えや経験豊かな人に聞きながら、あとは自分なりのやり方でやってきました。私は、出来栄えに満足がいかなかった時などには米の浸漬時間はどうだったか、むろの室温と麹の品温など細かく書き留め、パソコンに「覚え書き」として残してきました。
今でも仕事につまずいた時にはこの覚え書きを参考にしています。「麹は生き物、麹の気持ちになること」が、全ての結論ですね。
半切りから盛槽に移し、さらに発酵を促進させる
Q 会社がここまで続いた要因は?
A 基本的にこの仕事が好きだったのが第一ですね。とにかく良いものを作ってお客さまから評価して頂く、それを唯一の楽しみとしてここまで続けてきました。機械化が進んだとはいえ、生き物である麹を作る過程では昼も夜もありません。新しくこの仕事を覚える人には住み込みで勉強してもらうことになります。後継者を育てるのは難しく、あと2、3年は頑張るしかないですね。